対談

「100年に一度くらいの、地方を盛り上げるチャンス」 — 上田祐司 × ヤスシ(おうえんフェス)

どこにいても、平等に挑戦できる。オンラインになって、地方の可能性は広がった。

「100年に一度くらいの、地方を盛り上げるチャンス」 — 上田祐司 × ヤスシ(おうえんフェス)
第17回 おうえん BASH オンライン配信記念のサムネイル

地域おうえん BASH が会場からオンラインへ、そして YouTube 配信へと形を変えた2020年。第17回の配信記念として、BASH を始めた二人、ガイアックスの上田祐司とおうえんフェスのヤスシさんが、BASH の始まり、コロナ禍の地域、そしてこれからを語りました。その配信を、対談記事として再構成します。

一人ひとりの一歩を、おうえんする

ヤスシ「おうえんフェスは、3月11日を『おうえんの日』として、一人ひとりの一歩をおうえんしていこうと、全国の挑戦者をおうえんしている団体です。去年は『全国おうえんの旅』で、北は北海道、南は沖縄まで、いろいろな方をおうえんして歩きました」

ヤスシ「地域には、挑戦している人が本当にたくさんいて、それをおうえんしている人たちがいる。その人たちがより多くの人とつながって、挑戦が加速するようなおうえんをしたいと思っています。最近はオンラインイベントのプロデュースが多いです。コロナが起きてから、地方の可能性がすごく大きくなっていると感じています。どこにいても平等に挑戦できる世の中は素敵だなと思います」

人と人をつなげる会社として

上田「ガイアックスのミッションは、人と人をつなげることです。ソーシャルメディアやシェアリングエコノミーで、赤の他人同士をつなげることをゴールにしています。個人間の体験シェアの TABICA、長距離ライドシェアの notteco。notteco は田舎の方でよく使われています。シェアリングエコノミー関連の会社にも、30社近く投資をしています」

オフィス見学の「体験」から始まった

── BASH は、どうやって始まったのですか。

ヤスシ「おうえんフェスというフェスイベントが終わったあと、上田さんが TABICA で、ガイアックスの永田町のオフィスの体験ツアーをやっていたんです」

上田「TABICA は、誰でも自分の体験を提供できるサービスです。『うちの田んぼに来たらトラクターに乗せてあげる』『竹林で竹を切って流しそうめんができる』とか。代表の僕も体験を作らなければと思って、『うちのオフィスを案内します』という体験を出したら、なんとヤスシさんが来てくれた」

ヤスシ「シェアの考え方や、一人ひとりの可能性を広げるというガイアックスの活動にすごく共感して、一緒に何か仕掛けられないかと相談したのがきっかけです」

上田「地方や地域を盛り上げたいよね、と。おうえんフェスの名前を一部いただいて『地域をおうえん』、そこに、パーティーという意味の『BASH』。難しいことは考えずに、パーティーのように盛り上げていこうと、地域おうえん BASH を始めました」

登壇者と同じくらい、参加者が挑戦している

── 振り返ってみて、どうですか。

ヤスシ「2年くらい、月に1回ほどのペースでやってきて、毎回ゲストが2人、多いときは3人。いろいろな方に来ていただきました。それと、参加者に挑戦している人がすごく多いんです。登壇者と同じくらい話を聞きたい人がいる。そういう方々の声を届けて、交流を生んでこられたのが楽しかったです」

上田「当日だけで20〜30人に集まっていただいて、一人ひとりの自己紹介の時間が面白かったですよね」

ヤスシ「話を聞いて交流するのはもちろん、そのあと乾杯しながら交流する。そこから、いろいろなものが生まれたと思っています」

コロナ禍で、オンラインへ

── 2020年の2月、3月からのコロナで、どう変わりましたか。

ヤスシ「リアルで集まって乾杯して交流する、ということが難しくなったのが正直なところです。その中で、BASH でもオンラインに挑戦しています。長崎の角煮まんじゅうの会社の社長さんに来ていただいた回では、参加者の自宅に角煮まんじゅうが届く仕組みにして、みんなで食べながら社長の話を聞いて、何をおうえんできるかを考えました。挑戦者の声を届けて、全国から共感する人を集めるという意味では、オンラインだからこそできることがすごく広がっています」

上田「BASH は、会場でやっていた頃からオンライン配信も同時にしていましたね」

ヤスシ「東京にいる人だけが主役にならない場を作りたいと、いつも考えていました」

8つの祭りを、2日間に

上田「BASH のメンバーはオンライン配信に慣れていて、地域とのつながりもあったので、BASH そのものではないですが、コロナの時代に関連するオンラインのプロジェクトを結構やっていましたね」

ヤスシ「BASH を通じて出会った方々と一緒に、コロナがなければリアルでやっていたはずのお祭りをオンラインで開きました。青森では『オンライン青森夏祭り』として、ねぶた祭や三社大祭など夏の祭りを2日間にぎゅっと凝縮して、8つの祭りを全国どこからでも楽しめるようにしました。YouTube でも公開していて、再生は5万回以上ありました」

ヤスシ「面白かったのは、同じ青森県内の人でも、周りの祭りがどんな祭りか知らなかったこと。日程が重なっていたりもするので。他の地域を知らない人同士の交流が生まれました。ほかにも、四国を一周して体験をオンライン化する『四国オンライン体験フェス』や、広島県熊野町の伝統ある『筆まつり』のオンライン化で、全国の筆好きが集まるお祭りもやりました」

家賃の高い都心に、住む意味はあるか

── コロナを、地方や地域はどう受け止めればいいでしょう。

ヤスシ「可能性が広がっていると思います。私は渋谷から15分くらいのところに住んでいますが、焼肉を食べるときくらいしか都会に行かなくなった。高い家賃を払って住む意味があるのか、と実感しています。一緒にプロジェクトをやっているメンバーは地方在住の方が多くて、住む場所に関係なく、チャンスがどんどんフラットになっていると感じます」

上田「僕も永田町のオフィスまで歩いて5分くらいの麹町に住んでいたんですが、家賃が高すぎて、葉山に引っ越しました。引っ越して1か月くらいです。山も海も見えて、海が近いのはいいですね。本当は宮崎や四国、しまなみ海道に行きたかった。オンラインになったので、そういうところへの移住が現実的に検討できるのがいいですよね。ガイアックスのメンバーも、どんどん地方に出ています」

「最後の一個の物件です」

上田「葉山もそうですが、土地を買おうとすると、不動産屋さんに『全然ありませんよ』『最後の一個の物件です』『値引きと言われるなら、他のお客さんが定価で買ってくれるので』と言われるんです。地方創生と、僕らも含めてみんな言ってきましたけど、100年に一度くらいの、地方を盛り上げるチャンスなんじゃないかという気がします」

上田「投資させてもらっている ADDress は、月額4万円で全国住み放題のサービスです。これまでは『住み放題と言われても、そんなに田舎に行かないし』と迷っていた人が、都会ではやっていられないから、月4万円で田舎で過ごせるなら契約する、と。ユーザーがめちゃくちゃ増えました」

ヤスシ「移住に興味はあっても、仕事もあるし現実的じゃない、と思っていた人は多いと思います。でも周りが動き始めて、人ごとじゃないかも、と思う人が増えました」

上田「僕も先週は那須高原の森の中で過ごして、今週の前半は、山梨の山の中にお寺がたくさんある身延山で、瞑想をしながら、その合間に仕事をしていました。こういうことができる。世の中は本当にすごく変わっています」

流れは、止まらない

── コロナが落ち着いたら、元に戻ると思いますか。

上田「少しは戻るでしょうけど、基本的な流れは止まらないと思っています。地方を盛り上げようという私たちが、この流れを止めてはダメなんだろうと思います」

ヤスシ「地方に注目が集まっている今だからこそ、魅力や可能性をどんどん伝えていく。大事なときだと思います」

これからの BASH — 声を届けることと、交流と

ヤスシ「二つあると思っています。一つは、全国で活躍し挑戦している人の声を、オンラインで直接届けやすくなったこと。たくさんの声を届けて、ヒントやきっかけ、学びや気づきを提供したいです」

ヤスシ「もう一つは、BASH の『BASH』という観点です。動画を見て学ぶだけなら、YouTube を見ていただければいい。それに加えて、交流を大切にしたい。地域で挑戦している人、それをおうえんしている人、一歩を踏み出したい人が集まって交流することで、一人ひとりの一歩が加速する。配信だけでなく、その後に Zoom などで交流できる機会も作っていきたいと思っています。いつでもどこでも学べることと、しっかり交流して一歩を踏み出すこと。その両方を提供したいと思っています」

BASH の見立て

この配信で語られた「住む場所に関係なくチャンスがフラットになる」という変化に、制度も動いています。2024年には二地域居住を後押しする法改正(多拠点居住も対象)が施行され、関係人口も国の地方創生の柱の一つになりました。上田さんが「100年に一度くらいの、地方を盛り上げるチャンス」と呼んだ流れを、BASH は制度と現場の両方から追いかけています。

もう一つ、ヤスシさんが挙げた「同じ県内の人でも、周りの祭りを知らない」という気づきは、オンラインが地域の外だけでなく、地域の内側どうしもつなぐことを示しています。発信と交流をセットにするという BASH の考え方は、ストーリー・しくみ・地域をつなげて読む、いまのウェブサイトの作りにも引き継がれています。

地域おうえん BASH の第17回 オンライン配信記念として YouTube で配信した対談(約16分)をもとに、BASH 編集部が再構成しました。「──」の問いは、配信中に二人が互いに投げかけた問いを編集部が整理したものです。配信日の記録は見つかっておらず、#16(2020年6月30日)のあと、2020年後半の配信とみられます。発言は趣旨を変えない範囲で読みやすく整えています。数字(再生回数・料金・投資社数など)は、いずれも収録当時の話し手の発言です。