BASH アーカイブ

継がなくてもできること — 家業と地域の4つの距離

継がなくてもできること — 家業と地域の4つの距離
BASH #1「移住・IJUターン」(2018年)

家業を継ぐか、継がないか。地域の商いをめぐる話は、ついこの二択になりがちです。BASH の過去の登壇者を並べると、その間にいくつもの関わり方があったことが見えてきます。

屋号を継ぐ — 埼玉県寄居町

2018年の BASH #1 に登壇した上田嘉通さんは、JTB総合研究所で全国の過疎地域・離島地域のコンサルティングに携わり、仕事で訪れた島は70を超えます。全国を回りながら自分の地元に何もできていないことに違和感を抱き、2018年4月に埼玉県寄居町へUターンしました。

継いだのは、祖父母が営んでいた小さな商店の「屋号」です。その名を受け継いで株式会社小田屋を設立し、登壇当時はまちづくり寄居のタウンマネージャーも務めていました。同じ回では、日本ふるさと手しごと協会代表理事の桜井里子さんが、伝統産業の職人の担い手支援について語りました。テーマは「継がなくてもできること」でした。

畳むはずの会社を担う — 愛媛県今治市

2019年の BASH #7 に登壇した丹後佳代さんは、今治市生まれ。兵庫県で教師になったあと、結婚を機に故郷へ戻りました。そこで、廃業を決めていたタオル会社を担うことになります。取引先も売上も経験も知識もゼロからのスタートでした。

いまは自社オリジナルブランド「OLSIA(オルシア)」を展開しています。この回は Satoyama カフェとのコラボ企画で、テーマは「地域と共に自社ブランドを育てる」でした。

資産を接ぎ木する — グラフトプレナー

2019年の BASH #12 では、宮崎県新富町の地域商社「こゆ財団」代表理事の齋藤潤一さんとともに、山崎実さんが登壇しました。山崎さんが運営するのは「グラフトプレナー」のコミュニティです。家業の資産を活かして新しい価値を生む後継者を指す言葉です(graft は英語で「接ぎ木」の意味)。

家業をそのまま続けるのでも、ゼロから起業するのでもなく、受け継いだものを土台に別の枝を伸ばす。#1 の「屋号を継ぐ」と同じ方向の考え方です。

継いだ家業を、みんなで支える — 長崎

2020年3月の BASH #14 は、BASH として初めて会場を持たないオンラインのみの開催でした。主役は、2017年に3代目として「長崎角煮まんじゅう」の岩崎本舗を継いだ岩﨑礼司さんです。新型コロナウイルスの影響で観光客が減り、売上は2月に3割減、3月に4〜5割減。パートを含め約130人の生活を背負う会社の状況を直接聞き、状況を直接聞いたうえで、参加者が短期・中期・長期の打ち手をワークショップで考える回として企画されました。

継ぐ人ひとりに背負わせず、外にいる人が知恵を出す。BASH という場の使い方を示した企画です。

BASH の見立て

4つの事例を並べると、「継ぐ/継がない」の間に、屋号だけを継ぐ、畳むはずの会社を引き受ける、資産を土台に新しい事業を足す、外の人と一緒に支える、という段階があります。

地域の空き家や古い商店の活用も、同じ線の上にあります。所有と運営を分ける、外の資金や人を入れる、といったしくみは、BASH の「地域づくりのしくみ」でも扱っています。

登壇者の経歴・発言は、各回の告知・開催報告に書かれている内容に基づきます(役職は登壇当時)。