ガイド
自治体の担当者向け: ふるさと住民登録の準備カレンダーと予算の組み方
利用申請は2027年1月末まで。担い手活動の「指定」に要綱はいらない。お金がかかるのはサポート施策とコーディネーター。
ふるさと住民登録制度に参加する市町村は、2026年10月末から2027年1月末までに総務省へシステム利用申請を出し、2027年3月末のアプリ公開までに紹介ページ・担い手活動・サポート施策を用意すれば始められます。このページは、町の企画課の担当者が、申請までにそろえるもの、令和9年度予算に載せるもの、特別交付税の扱い、議会への説明を、総務省の一次資料だけで順に確かめるための手順書です。
結論 — 申請に要るのは「参加の意思決定」と申請様式の4項目だけ
システム利用申請に添える書類は、総務省が送る申請様式です。記入する項目は、①管理者アカウントにする職員のメールアドレスなど、②庁内ネットワークの構成と端末、③参加自治体以外にインターネット経由でつなぐ関係団体の有無、④ベーシック登録・プレミアム登録ごとの受付開始予定時期、の4つが想定されています(総務省 第2回全国説明会資料、2026年9月30日)。
担い手活動の「指定」は、自治体としての意思決定で足ります。要綱の作成や総務省への届出といった公式の手続きはありません。自治会などの活動を包括的に指定することもでき、その場合はリストにしておくことが望ましいとされています(ガイドライン Ver.1.0、2026年3月27日)。
条例・規則・要綱・予算が必要になるのは、プレミアム登録者向けのサポート施策です。お金を出す施策は予算計上と補助金要綱、公共施設の住民並み利用のような扱いは条例や規則の改正を、自治体の実情に応じて行うよう求められています(同ガイドライン)。
準備カレンダー(2026年3月〜2027年4月)
国の資料で日付が出ているものを、町の担当者が動く順に並べました。「予定」「目途」は資料の表現のままです。
- 2026年3月27日ガイドライン Ver.1.0 公表。同じ日に「令和8年4月以降における担い手活動実績記録用様式」(エクセル)が一斉通知・照会システムで送付 →
- 2026年4月〜担い手活動の実績の記録が始まる。アプリ公開前の実績も、システム稼働後に自治体が入力すればプレミアム登録の要件判定に使える予定 →
- 2026年6月12日第1回全国説明会(宮城県)。特別交付税措置の上限とシステム利用料の扱いが示された →
- 2026年9月30日第2回全国説明会。システム利用申請の受付期間と、申請後の流れが示された →
- 2026年10月16日〜12月20日試用版アプリのモニター実証(モデル団体、予定)。モニター計2,000〜3,000人程度・100以上の自治体が参加予定 →
- 2026年10月末総務省から各自治体へ、申請様式・システム概要資料・システム利用規約を送付予定。申請意向のアンケート調査も別に実施予定 →
- 2026年10月末〜2027年1月末システム利用申請の受付(予定)。制度開始後の追加受付も予定されているが、時期と方法は今後検討 →
- 2027年1月下旬モデル事業の最終取りまとめ(予定) →
- 2027年2月下旬目途申請した自治体に管理者アカウントを発行し、マニュアルを配布(予定) →
- 2027年3月上旬自治体のシステム利用開始の見込み。紹介ページの作成・情報登録などの準備ができる →
- 2027年3月末国民向けサービス開始(アプリ公開)。原則この時に受付開始、間に合わなければ準備が整い次第でもよい →
- 2027年4月〜(令和9年度)制度の運用。令和9年度までに参加すれば、システム利用料は一定期間負担なし →
利用申請までにそろえるもの — 7つの手順
ガイドラインと説明会資料の順番に、町の担当者がやることを番号で並べました。手順3〜5は申請の前でも後でもかまいませんが、アプリ公開の日に受付を始めるなら、申請と並行して進めておく必要があります。
- 手順1参加を決める(制度参加の意思決定)。参加は任意で、市区町村・都道府県のどちらも登録先になれる。申請意向のアンケートに答える →
- 手順2申請様式の4項目を庁内で確かめる。管理画面は LGWAN 回線から入るので、情報政策の担当と庁内ネットワーク・端末を確認する。アカウントは複数発行でき、担当を分けられる →
- 手順3地域の担い手ニーズを洗い出す。広報・地域政策・農政・商工・観光・教育などの部署と、自治会や農家など担い手を必要とする主体に聞く →
- 手順4担い手活動を指定し、リストにする。基準は①人口減少などによる担い手不足への対応、②公共性や地域貢献が十分にあること。草刈り・雪下ろし・イベント運営・清掃のほか、有償活動や多面的機能支払交付金の共同活動も指定できる。現地での活動を伴わないものは指定できない →
- 手順52026年4月以降の担い手活動の実績を、国の記録用様式で残しておく。募集のときに「ふるさと住民登録制度の実績としてカウントされます」と知らせることも勧められている →
- 手順6紹介ページと、登録時アンケートの独自項目を考えておく。2027年3月上旬からシステムに入力できる見込み →
- 手順7プレミアム登録者向けのサポート施策を決め、予算・要綱・条例や規則で制度化する。登録そのものへの返礼品(現地に行かなくても届く物品)は禁止 →
令和9年度予算に何を載せるか
総務省の資料に出てくる経費を、財源の種類ごとに表にしました。特別交付税の上限は令和8年度の措置として示された数字です。令和9年度の扱いは、コーディネーターの人数上限とサポート施策の経費について「今後検討」とされています(第2回全国説明会資料 Q4-2・Q5-5、2026年9月30日)。
国の側では、総務省が令和9年度概算要求で「ふるさと住民登録制度に要する経費」3.2億円を求めています(総務省 地域力創造グループ「R9概算要求のポイント」、2026年9月)。システムの構築費は、令和7年度補正予算で32.1億円がデジタル庁に一括計上されています(総務省「令和7年度補正予算及び基本的な制度設計」、2026年7月時点)。
| 経費 | 中身の例(資料の記載) | 国の財源・扱い | 出典 |
|---|---|---|---|
| システム利用料 | ふるさと住民システムの運用経費 | 令和9年度までに参加する団体は一定期間負担なし(国費で対応)。令和10年度以降の参加団体は今後検討 | ガイドライン IV 3-1(2026-03-27) |
| ふるさと住民コーディネーター | 報償費・委託費・活動経費。会計年度任用職員なら社会保険料も含む | 特別交付税。上限は専任1人500万円・兼任1人40万円(令和8年度) | 総務省 FAQ・第1回説明会資料(2026-06) |
| 情報発信・登録のきっかけづくり・受入環境整備 | 既存の関係人口ポータルの運用、担い手活動の参加者の保険料、活動に要る物品 | 特別交付税。事業費1,000万円が上限、措置率0.5(財政力補正あり) | 総務省 FAQ・第2回説明会資料 Q5-1〜5-4 |
| コーディネーターの募集経費 | 募集の広告など | 「その他事業費」として措置率0.5(財政力補正あり) | 第2回説明会資料 Q4-9 |
| 既存アプリ・サイトの改修 | ふるさと住民アプリと連携するための改修 | デジタル活用推進事業債の対象 | 第1回説明会資料・第2回 Q5-2 |
| サポート施策 | 交通・宿泊費補助、ワーキングスペース利用料補助、地域内だけで使える地域通貨など | 令和9年度に向けて検討中(特別交付税の対象範囲は未定)。予算計上・補助金要綱・条例や規則で制度化 | ガイドライン III 3・第2回 Q3-6・Q5-5 |
コーディネーター経費の特別交付税 — 読み違えやすい5点
①上限の書き方が二つあります。コーディネーターの設置経費は「専任1人500万円・兼任1人40万円を上限に措置」、それ以外の取組は「事業費1,000万円を上限に措置率0.5(財政力補正あり)」と、資料は書き分けています(ガイドライン IV 3-2、総務省 FAQ)。コーディネーター経費に措置率が掛かるかどうかは、これらの資料からは読み取れません。予算の歳入見込みを立てる前に、県の市町村課を通じて確かめてください。
②「専任」は、ほかの業務と兼ねず、もっぱらコーディネーターの業務をする人です。同じ自治体の中でほかの業務も持てば「兼任」です(第2回説明会資料 Q4-7)。
③委託でも対象です。ただし法人に委託しても、特定の個人が従事し、その人の勤務日・対応時間まで特定して、経費報告に個人ごとの報償費と業務内容を書く予定です(同 Q4-1)。
④任期の定めのない常勤職員(いわゆる普通の町職員)は対象外です。任期の上限はなく、居住地の要件もありません。勤務地は基本的に現地です(同 Q4-3・Q4-4)。地域おこし協力隊や集落支援員が兼ねることはできますが、二つの特別交付税を重ねて報告することはできません(同 Q4-5)。
⑤令和8年度の措置は、それまでの「二地域居住・関係人口」の特別交付税を基本的に引き継いだもので、令和8年度はコーディネーターの人数に上限を設けていません。令和9年度以降は、モデル事業を見ながら必要に応じて検討するとされています(同 Q4-2)。
議会への成果の説明 — 町が自分で数えられるもの
ガイドラインは成果指標を決めていません。そのうえで、制度の中で町が自分で把握できる数字は次のとおりです。担い手活動の実績は、登録者と自治体がいつでも見られます(ガイドライン II 4-2)。登録者が答えるアンケートには、町独自の質問を足せます(同 III 2-2)。住所地の住民もベーシック登録できますが、統計上の関係人口には含めません(同 II 2-7)。
編集部の整理では、議会に出す数字は「登録した人の数」より「町の担い手不足がどれだけ埋まったか」に寄せると説明しやすくなります。たとえば、指定した担い手活動の本数と延べ参加回数、プレミアム登録者の数と更新率、長期滞在者(年間滞在10日以上を基本に町が設定)の数です。ガイドラインの概要は制度の趣旨を「人口減少下における地域の担い手確保や活性化」としており、指標をここに合わせておくと、サポート施策の費用対効果も同じ物差しで説明できます。
物品の購入は、議会と住民に説明できるかがはっきり問われています。担い手活動のために受入団体の備品を買う場合は、公金でまかなう妥当性、専ら担い手活動のためか、借り上げではなく購入とする合理性、の3点に留意するよう総務省は書いています(第2回説明会資料 Q5-1)。
よくある質問
──担い手活動を指定するのに、要綱や議会の議決は必要ですか?
要綱も総務省への届出も要りません。自治体としての意思決定で足り、自治会などの活動をまとめて指定することもできます。指定先はリストにしておくことが望ましいとされています(ガイドライン Ver.1.0)。
──利用申請の締め切りに間に合わなかったら、参加できませんか?
制度開始後も追加の申請を受け付ける予定です。ただし時期と方法は「今後検討」です。また、システム利用料の免除は令和9年度までに参加する団体が対象です(第2回説明会資料、ガイドライン IV 3-1)。
──アプリ公開の日に、町の受付も始めないといけませんか?
原則は同時開始ですが、間に合わなければ準備が整い次第でかまいません。町が管理者ポータルで公開の手続きをするまで、町の情報はアプリに表示されません(第2回説明会資料、2026年9月30日)。
──ふるさと住民登録と二地域居住を、一つの事業にまとめられますか?
財源はつながっています。令和8年度の特別交付税は、従来の二地域居住・関係人口の特別交付税を基本的に引き継いでいます(第2回説明会資料 Q4-2)。制度の中でも、プレミアム登録者のうち年間滞在10日以上を基本に町が決めた長期滞在者を、登録証に示せます(ガイドライン II 4-5)。二地域居住の計画づくりは「特定居住促進計画の作り方と、特定居住支援法人の指定の取り方」にまとめています。
──コーディネーターを置く人も予算もない小さな町はどうしますか?
都道府県がコーディネーターを置くこともでき、モデル団体の中にも県が広報や市町村支援のために置く検討があります(第2回説明会資料 Q4-11)。県が指定した担い手活動は、市町村の承認なしに市町村の実績としても記録されます(同 Q6-4)。まず県の担当課に、県の配置と県指定の活動の予定を聞くのが近道です。
──サポート施策は必ず用意しないといけませんか?
必須ではありません。登録証が表示されるだけでも価値を感じる人がいるとして、公共施設の住民並み利用や避難先としての受け入れなど、お金のかからない施策も含めて検討するよう総務省は書いています(第2回説明会資料 Q3-2)。
──民間の宿や体験事業者と組めますか?
組めます。民間団体の活動も基準に合えば担い手活動に指定できます(総務省 FAQ)。協定などで基準をはっきりさせれば、団体の活動を包括的に指定することもできます(第2回説明会資料 Q1-9)。プレミアム登録者限定のサービスを民間が出せるよう、本人の同意を得て登録情報を共有するシステム連係も計画されています(ガイドライン IV 1)。
編集部コメント
この制度で町の手間が集中するのは、申請書類ではなく「誰に、どの活動を頼むか」を決めるところです。国の資料が担い手活動の指定に要綱すら求めていないのは、町の判断で早く動いてほしいからだと読めます。2026年4月以降の活動はすでに実績として数えられるので、今年度の草刈りや祭りの運営から記録を始めておけば、アプリ公開の日に最初のプレミアム登録者を迎えられます。
予算は、コーディネーターと受入れの経費を先に固め、サポート施策は令和9年度の国の扱いが出てから足す順が安全です。地域で宿・体験・コワーキングを運営する事業者と組むときの考え方は、BASH の運営チームに相談できます。
出典
数字と日付は、次の一次資料で2026年10月27日に確かめました。