ガイド
特定居住促進計画の作り方と、特定居住支援法人の指定の取り方
計画は、県の計画を前提に市町村が7項目を書いて公表する。支援法人の指定は、市町村長に9種類の書類を出して申請する。
特定居住促進計画は、都道府県の二地域居住の広域計画を前提に、市町村が区域・方針・施設など7項目を書き、県の意見と住民の意見を聴いて公表する計画です。特定居住支援法人は、NPO・一般社団法人・二地域居住の促進を目的とする会社が市町村長に申請して指定を受ける法人で、2026年6月30日時点で146法人、計画は53件です(国土交通省)。
数字で見る — 計画53件・支援法人146法人(2026年6月30日)
国土交通省が把握している数は、都道府県の広域的地域活性化基盤整備計画(二地域居住)が25、市町村の特定居住促進計画が53、特定居住支援法人が146です(2026年6月30日時点、国土交通省「二地域居住の促進について」2026年7月)。国の目標(KPI)は、2024年11月1日の改正法施行から5年間で、計画累計600件・支援法人累計600法人です(同資料)。
下の表は、同じ資料の都道府県別の数から、支援法人が多い上位8道県と、市町村計画が0の例として岩手県を並べたものです(5法人の宮城・広島・香川は表に入れていません)。市町村計画が0でも支援法人がいる県(岩手4・千葉2・群馬1など)があり、指定は計画より先に進むことがあると読めます。
| 都道府県 | 県の計画 | 市町村の計画 | 支援法人 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 1 | 6 | 27 |
| 静岡県 | 1 | 4 | 16 |
| 新潟県 | 1 | 3 | 11 |
| 長野県 | 1 | 5 | 9 |
| 和歌山県 | 1 | 4 | 9 |
| 鹿児島県 | 1 | 1 | 8 |
| 鳥取県 | 1 | 2 | 7 |
| 三重県 | 1 | 2 | 6 |
| 岩手県 | 0 | 0 | 4 |
| 全国合計 | 25 | 53 | 146 |
市町村向け: 特定居住促進計画の作り方 — 8つの手順
国土交通省の「二地域居住等促進のための広活法運用ガイドライン」(2024年11月)の第3章に沿って、手順を並べました。条文は広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律(広活法)です。計画の様式は、同ガイドラインの末尾に「参考様式② 特定居住促進計画」があります。
- 手順1県の計画があるか確かめる。市町村計画は、県の広域活性化計画(二地域居住)の送付を受けて、その特定居住重点地区の中でだけ作れる(広活法第22条)。県の計画がなければ、市町村から県に作成を提案できる(第5条第10項)。県は作るかどうかを遅滞なく通知し、作らないなら理由を示す →
- 手順2庁内の体制を作る。二地域居住の担当だけでなく、住宅・空き家・交通・産業などの部署を巻き込んだ分野横断の体制が望ましいとされる。建築基準法の特例を使うのに市町村長が特定行政庁でない場合や、市街化調整区域に区域を置く場合は、県知事との協議が要る →
- 手順3特定居住促進区域を決める(記載事項①)。区域にするエリアを中心に、土地利用や地域公共交通の状況を分析する →
- 手順4基本的な方針を書く(記載事項②)。地域が目指す将来像、二地域居住者に期待すること、受け入れの取組方針、目標を入れる。「住まい」「なりわい」「コミュニティ」の課題への取組を検討する →
- 手順5施設と事業を書く(記載事項③〜⑦)。特定居住拠点施設、生活の利便や就業の機会につながる施設、それと一体で効果を高める事業、県の基盤整備事業との連携、計画期間。期間は県の計画期間の範囲内で、3〜5年程度が目安 →
- 手順6意見を聴く。作成前にあらかじめ県の意見を聴く(第22条第5項)。住民の意見を反映する措置をとる(同第6項、説明会やパブリックコメントなど)。特定居住促進協議会があれば協議する(同第7項) →
- 手順7特例を使うなら協議と同意をとる。住居専用地域の用途規制の特例(第24条)などを使う場合は、特定行政庁や県知事と協議し同意を得て、用途特例適用要件を計画に定める(第22条第8項・第11項) →
- 手順8計画を公表し、評価する。公表は第22条第13項。目標の達成状況を定期的に評価し、結果を公表することが望ましいとされる →
計画の目標と指標 — 議会と住民に何を示すか
ガイドラインは、効果を確かめるために目標を設定し、定期的に達成状況を評価することを重要としています。二地域居住者の増減といった数値や、人手不足の解消・消費の拡大といった課題の目標値を置くことも考えられるとしたうえで、ゴールや分析の手法そのものを計画期間中に詰める場合は、特定居住拠点施設の利用者数やイベントの参加者数を中間的・暫定的な指標にすることも挙げています(広活法運用ガイドライン 3-2)。
合意形成や施策の具体化に時間がかかる場合は、いまできる取組を中心に計画を作り、時間のかかる事項は「今後の検討課題」として計画に明記する進め方も認められています(同 3-1)。小さく作って後から変える、が制度上できるということです。
計画を作ると使えるもの
広活法運用ガイドラインの第6章が挙げる特例と、第5章の支援法人の仕組みを表にしました。
| しくみ | 中身 | 条文 |
|---|---|---|
| 建築基準法の用途特例 | 住居専用地域で、住宅をコワーキングや日用品店などに使うときの特例許可の要件を、特定行政庁の同意を得て計画に定め公表できる。事業者が許可の見通しを立てやすくなる | 広活法第24条・第22条第3項・第8項・第9項 |
| 公的賃貸住宅等の特措法の特例 | 計画に公的賃貸住宅等整備事業を記載した場合の特例 | 広活法第25条 |
| 建築物の用途変更への配慮 | 特定居住促進区域内の既存建築物の用途変更について、県知事などとの協議 | 広活法第26条・第22条第11項 |
| 特定居住促進協議会 | 市町村・県・支援法人・住民・宅建業者、商工会・農協・交通事業者・観光事業者などで組織でき、協議が調った事項は構成員が尊重する | 広活法第23条 |
| 支援法人からの計画提案 | 支援法人は素案をつけて計画の作成・変更を提案できる。市町村は遅滞なく採否を通知し、採らないなら理由を示す | 広活法第32条 |
企業・NPO向け: 特定居住支援法人の指定の取り方 — 6つの手順
指定するのは市町村長です。国や県に申請するのではなく、活動したい市町村ごとに申請します。全国規模の法人でも指定は法人格単位で、審査ではその市町村の中で適正に業務ができるか(地域支部の計画や責任者など)を確かめることが考えられる、と手引きは書いています(国土交通省「特定居住支援法人の指定等の手引き」)。
- 手順1法人格を確かめる。対象はNPO法人、一般社団法人・一般財団法人(公益法人を含む)、二地域居住の促進を図る活動を目的とする会社(広活法第28条第1項)。会社の場合も、定款に支援法人の業務が具体的に書かれていることまでは求めない →
- 手順2担う業務を選ぶ。法の業務は①情報提供・相談、②拠点施設や生活・就業に役立つ施設の整備、③調査研究、④普及啓発、⑤その他(第29条)。市町村の必要に応じて一部だけでも指定の対象になる。佐渡市の2026年度の公募要項は2項目以上を条件にしている →
- 手順3市町村の指定の方針と受付を確かめる。手引きは、市町村が求める業務や指定の有効期間を事務取扱要綱などで明らかにし、申請前の事前相談を周知することを勧めている →
- 手順4書類をそろえる。手引きの要綱例では、申請書のほか、定款、登記事項証明書、役員の氏名・住所・略歴、組織・沿革・事務分担、前事業年度の事業報告書・収支決算書・貸借対照表、当該年度の事業計画書・収支予算書、二地域居住の促進に関する活動実績、第29条の業務の計画書、その他参考書類の9種類 →
- 手順5審査を受ける。基準は市町村が定めるが、手引きの例は、欠格事由(暴力団員等・役員の破産など)、業務の方法の適切さ、専門性(活動実績や宅建業者などとの連携)、人員体制、個人情報の取扱い、経理的基礎。不十分な点は、すぐ却下せず補正を促すべきとされる →
- 手順6指定を受けたら。市町村長が名称・住所・事務所所在地を公示する(第28条第2項)。変更は事前に届け出る。事業年度の前に事業計画書と収支予算書、終了後に事業報告書などを出し、市町村長の報告徴収・改善命令の対象になる(第30条) →
申請の窓口と期間 — 公募要項の実例
受付期間と審査の期間は市町村ごとに決まり、国の手引きには日数の目安が書かれていません。公表されている公募要項から、二つの例を挙げます。
新潟県佐渡市は、2026年度の申請を2026年4月1日から2027年3月5日まで随時受け付け、指定が適当と認めた場合は申請から30日以内を目途に指定書で通知するとしています。窓口は地域振興部 移住交流推進課です(佐渡市「令和8年度 二地域居住等受入促進にかかる『特定居住支援法人』公募要項」)。
新潟県三条市は、2026年度以降、年度内の指定を希望する場合は各年度の初めから3月10日までに申請するとしています。窓口は市民部 地域経営課で、持参・郵送・電子メールで提出できます。申請条件には市税などの完納も入っています(三条市「令和7年度 二地域居住等受入促進にかかる『特定居住支援法人』公募要項」)。
| 佐渡市(令和8年度) | 三条市(令和7年度要項) | |
|---|---|---|
| 受付期間 | 2026年4月1日〜2027年3月5日 随時 | 2026年度以降は各年度当初〜3月10日 |
| 審査の期間 | 申請から30日以内を目途に通知 | 記載なし(審査結果を通知) |
| 業務の条件 | 法第29条の業務のうち2項目以上 | 法第29条の業務として適切なこと |
| 提出書類 | 申請書+9種類 | 申請書+9種類 |
| 独自の条件 | — | 納期限の来た市税等の完納 |
| 窓口 | 地域振興部 移住交流推進課 | 市民部 地域経営課 |
指定を受けると何ができるか
一つめは、空き家などの持ち主の情報です。業務のために特定居住促進区域内の住宅や施設の所有者等を知る必要があるとき、支援法人は市町村に所有者等関連情報(氏名・住所・連絡先が基本)を求められます。市町村は本人の同意を得たうえで提供し、所在が分からない人の情報は提供できません(広活法第31条、手引き 第3章)。支援法人が自分で登記簿などを調べても分からない場合を想定した仕組みです。
二つめは、計画づくりへの関与です。素案をつけて特定居住促進計画の作成・変更を提案でき(第32条)、特定居住促進協議会の構成員にもなれます(第23条)。
三つめは、国の実証の応募資格です。国土交通省の「特定居住支援法人モデル構築実証調査」は、支援対象者を特定居住支援法人(または支援法人が代表のコンソーシアム)に限り、指定書か指定の見込みを示す書面の提出と、全国二地域居住等促進官民連携プラットフォームの会員であることを求めています(参加団体募集要領)。
国のモデル実証の公募 — 2026年度の1次・2次
支援額の目安は、募集要領の表記のままで、広域型が1団体あたり「1〜2,000万円程度」、地域密着型が「2〜500万円程度」です。支払いは国の調査の受託者から、取組完了時の一括精算で行われます(2次公募 参加団体募集要領)。立て替えが前提になるので、資金繰りを先に見ておく必要があります。
3次の公募は、2026年10月27日時点で国土交通省の二地域居住のページと報道発表では確認できませんでした。9月30日の発表にも次回の予定は書かれていません。同じページの1次・2次の募集は「終了」と表示されています。
よくある質問
──県が計画を作っていないと、市町村は特定居住促進計画を作れませんか?
作れません。市町村計画は県の広域活性化計画(二地域居住)を前提にします。ただし市町村から県に作成を提案でき、県は採否を遅滞なく通知します(広活法第5条第10項、運用ガイドライン 2-3)。2026年6月30日時点で県の計画があるのは25都道府県です。
──計画がない市町村でも、支援法人の指定は受けられますか?
国土交通省の集計では、市町村計画が0の県にも支援法人がいます(2026年6月30日時点で岩手県4・千葉県2・群馬県1など)。ただし所有者等関連情報の請求など一部の仕組みは、特定居住促進区域の中の物件が対象です(広活法第31条)。
──株式会社でも支援法人になれますか?
なれます。二地域居住の促進を図る活動を目的とする会社が対象です。審査では定款の目的や事業報告書を見て総合的に判断し、支援法人の業務が書類に具体的に書かれていることまでは求めない、と手引きにあります。
──いくつの市町村で指定を受けられますか?
上限の定めは手引きにありません。指定は市町村ごとなので、活動する市町村それぞれに申請します。
──指定を受けると、国や市町村からお金が出ますか?
指定だけで交付されるお金は法律にありません。国のモデル実証調査は支援法人が応募の条件ですが、公募制で、支払いは取組完了時の一括精算です。
──ふるさと住民登録制度とはどう関係しますか?
総務省のふるさと住民登録制度は、プレミアム登録者のうち年間滞在10日以上を基本に自治体が決めた長期滞在者を登録証に示せるなど、二地域居住の推進も意識した設計です。自治体の準備は「ふるさと住民登録の準備カレンダーと予算の組み方」にまとめています。
編集部コメント
計画も指定も、書類そのものは国の様式と要綱例がそろっていて、白紙から作る必要はありません。差が出るのは、計画の「基本的な方針」にどんな二地域居住者に来てほしいかを書けるか、支援法人の申請にその町での活動実績と業務計画を書けるか、の2点です。どちらも、宿・空き家・コワーキングを実際に回している事業者と市町村が先に話しておくと早く進みます。
支援法人は計画の作成・変更を提案できるので、民間側から計画を動かすこともできます。地域で拠点を運営する事業者の考え方は、BASH の運営チームに相談できます。
出典
数字と日付は、次の一次資料で2026年10月27日に確かめました。